

【まるわかり
不動産】借金でアパート建設~効果と対策
日本の相続税は世界水準よりも非常に高く、また、相続財産の約半分が不動産です。従って相続対策は不動産対策である!と言えます。そして、地価が上昇を続けたバブルの時代、「アパートを建てませんか?自己資金がなくても借金して建てたら良いのです!相続税が安くなりますよ!」というセールストークが一世を風靡しました。そこには収入が拡大していく夢のようなシミュレーション。多くの地主が借金をしてアパートを建てました。
やがて年月が過ぎ、平成27年から相続税の増税路線が鮮明になったことをきっかけに、再び類似のセールストークが使われ始めました。しかし、人口減少時代の到来、空家問題の鮮明化に伴い、金融庁は地銀の融資への過熱や不良債権化を懸念して監視の目を強めています。果たして、借金することで節税となり相続税が安くなるのでしょうか?アパートを建てると、節税効果があるのでしょうか?
さて、ここで質問です。
「借金をすると相続税が安くなるのでしょうか?」
みなさん、どうでしょう?答えは、「ノー!」。ハズレた皆さん、ご安心ください。金融機関を含めた様々な場所でセミナーを行なってきましたが、正解率は20%にも満たない状況です。
相続税の基本的な計算方法は次のとおり。相続財産から相続債務を控除したものが課税価格。さらに基礎控除を控除したものが課税遺産総額であり、この課税遺産総額に税率がかかります。
- ① 相続財産 - 相続債務 = 課税価格
- ② (課税価格 - 基礎控除)× 税率 = 相続税額

仮に1億円の借金をした場合、負債(相続債務)は1億円増えます。と同時に資産(相続財産)も1億円増えます。そして課税価格は変わらないので、相続税額は変わりません。つまり、借金をするという行為自体には、相続税の減額効果は無いのです。
では、なぜ借金をするのか。第一に、手持ち現金がない。第二に、融資を活用すると、小さい自己資金で大きな運用を行なうことができます。この効果をレバレッジ効果(てこの原理)と言います。借金そのものには相続税の減額効果はありませんが、経済的には合理的な行動なんですね。