共有物分割
前稿(遺産分割)で、遺産分割に①現物分割、②換価分割、③代償分割、④共有分割の4通りの方法があることをご説明しました。
このうち、④共有分割は、財産を安易に売却することなく、しかも共有持分という形で当事者の意図通りに財産を分割できるので、多くの不動産が相続を機に複数人の共有となっています。また、相続以外の理由で複数人の共有となっている不動産もあります。
しかし、共有不動産の売却(処分行為)には、共有者全員の同意が必要です。
また、共有持分のままでは通常融資がおりません。
管理や修繕をしようにも、共有者間で費用負担の合意形成をすることは容易ではありません。
他の共有者に相続が発生して共有関係が更に複雑になってしまい、もはや共有者に会うことすらできなくなってしまったという場合も少なくありません。
その前に共有関係を解消しておきたいと考えた場合に、選択肢の一つとなるのが共有物の分割です。
不動産が相続等で問題となる理由は①分けにくいこと、②時価の把握が難しいことにあります。
建物を2つに物理的に分割することは困難です。
なお、1つの建物を、登記上複数に分割して区分所有とすることも可能ですが、相当な困難が伴います。
これに対して、土地は1つの筆を複数に分けること(分筆)は可能です。
また、既にある公法上の境界線を新しく引き直すこと(合筆の後で分筆)は可能です。
しかし、土地を持分割合どおりに分割することは、実際上は思ったほど簡単ではありません。
まず、分筆の手続きは、土地家屋調査士に依頼することになります。
土地家屋調査士は、測量を行って新しい境界線を登記することができます。
ただし、どのような線で分筆すれば良いか、が問題になります。
土地は、単純に面積を2等分しても、価値が2等分になるとは限りません。
形状・間口と奥行きのバランス・接道状況・方位など、さまざまな要素によって価値が決まります。
その際に、不動産の経済価値の専門家である不動産鑑定士をご活用ください。
共有地の分割については、特集 共有物分割にて詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。