M&A
クライアント様から、事業承継などを目的としたM&Aの相談を受けることもあるかと思います。M&Aは売買ですから、売買対象となる株式や事業の価格算定によって、その取引の成否に大きな影響をおよぼします。
特に、不動産を多く保有している企業が対象になる場合は、不動産の時価評価がM&A成立のカギとなります。
不動産の時価評価は、以下のような場面で必要となります。
希望売却価格の設定
適切な希望売却価格が設定されていないと、買主の検討対象から漏れてしまうことがあります。企業価値の算定には、収益還元法(インカム・アプローチ)、類似会社比較法(マーケット・アプローチ)などがありますが、不動産を多く保有する企業の場合、時価純資産法(コスト・アプローチ)が最も説得力を有することもあります。
また、他の評価手法を適用する場合でも、不動産の含み益(または含み損)がどの程度あるのかは、企業価値に大きな影響を与えます。
財務デューデリジェンス(DD)
交渉がある程度進んだら、買主は、売主からより詳細な資料の開示を受け、資料の精査(デューデリジェンス)を行います。
このうち、売主の財務諸表が適正に作成されているかの精査が、財務デューデリジェンスです。
財務デューデリジェンスは、主に正常収益力分析と実態純資産分析からなりますが、特に実態純資産分析では、不動産をはじめとする資産の時価評価が肝要です。
また、工場の閉鎖などにより、現在の用途とは異なる用途を前提とした評価が必要となる場合もあります。
PPA(パーチェス・プライス・アロケーション)
財務会計上、M&Aによって取得した対象会社の資産・負債の全てを公正価値(時価)にて評価し、自社の連結財務諸表に取り込むこと(PPA)が要求されています。
PPAでは、ブランドなどの無形固定資産の評価が論点になりがちですが、実務上は、対象企業のBS上の有形固定資産、特に不動産の時価評価を適切に行うことが前提となります。
PPAはM&Aの取引後1年以内に行うこととされているので、迅速かつ客観的な不動産評価が求められます。
売主と買主で主張が乖離しやすいので、迅速かつ客観的な評価が重要です。不動産鑑定士へご相談ください。