隣地間売買
通常、土地の取引は、周辺の相場を基礎として、個々の不動産の個別的要因(形状・方位・道路との接面状況・高低差等)を考慮して売買価格が決められます。
個別的要因はあるにせよ、まずは不動産業者にヒアリングすれば、「この辺りはだいたい1坪○○万円くらい」と、金額のおおまかな当たりを付けることはできます。
しかし、既に土地を保有している方が、隣接する土地(隣地)を取得する場合は、事情が異なります。
元の土地と隣地との関係によって、相場と同程度が適正のこともあれば、相場よりも相当高く売買することが適正であるケースも想定されます。
極端な表現をすると、隣地間売買は「相場がない」領域とも言えます。
なぜなら、元の土地と隣地が一体となることによって、それぞれの土地の単純合計価格よりも価値が上がることがあるためです。
[ 元の土地価格
]
+
[ 隣地価格
]
≦
[併合後の価格
]
1000万円 + 1000万円 = 2000万円
の経済価値ではなく
1000万円 + 1000万円 2500~3000万円
の経済価値になるイメージです。
この価値の上昇部分を、不動産鑑定の世界では「増分価値」と呼んでいます。
この場合、買主は増分価値を加算して支払ったとしても経済合理性が成り立ちます。
具体的には、次のようなケースで増分価値が生じることが考えられます。
- ①元の土地が不整形地だったものが、隣地を取得することで整形になる場合
- ②隣地を取得することで、より幅員が広い(商業地の場合はより人通りの多い)道路に接する場合
- ③規模が大きくなることで、土地をより有効に利用できる場合
- 容積率や日影規制など法規制が緩和される場合
- 間口が広くなり設計の自由度が増す場合
- 駅から徒歩圏内で分譲マンションが建設できるようになる場合
隣地の所有者は、浅からぬ関係の文字通り「お隣様」ですが、何かとトラブルが多いのも実情です。
不動産鑑定には、隣地間の売買を想定した限定価格という概念があります。
増分価値を適切に判定し、更にその増分価値を売主・買主どちらに配分することが公平なのか、不動産鑑定では、これを論理的に売買価格へ反映することができます。
「隣地を買収する場合」、「隣地に売却する場合」には、ぜひ不動産鑑定士にご相談ください。